五色ヶ原の森は日本百名山の一つ、乗鞍岳の山麓に位置する森で、日本の屋根といわれる飛騨山脈(北アルプス)の最南端に属しています。乗鞍岳は日本で19番目に高く、中部山岳国立公園(1934年に指定)の山岳地帯にあり、岐阜県と長野県にまたがる3,000m級の山です。
主峰剣ヶ峰3,026mをはじめとする2,000m以上の山が23もの峰々が連なる複合火山で、それらを総称して乗鞍岳と呼びます。麓から見た山が馬の鞍に似ていることから由来しています。いにしえには「位山」「愛宝山」「騎鞍ヶ嶽」「朝日岳」などとも呼ばれていました。
さかのぼること128万年前と32万年前の2度による活発な火山活動の末、約9000年前に現在の山容が形成されました。火山が形成した乗鞍岳には8つの平原、7つの湖(カルデラ火口湖を含む)があります。剣ヶ峰直下に位置する権現池は、日本の火山の火口湖として2番目の高さにあります。
流れ出た溶岩帯により織りなす広大な裾野は、南北に15km、東西に30km以上を有し、岐阜県側の山の中腹に3000haもの面積をもつ五色ヶ原の森を造りだしました。森の広さは、東京ドーム638個分にあたります。
乗鞍スカイラインは毎年5月15日から10月31日まで開山します。タクシーやバスで標高2,702mまで上がれる雲上の楽園とも呼ばれ、手軽に登れる登山入門の山としても知られています。自転車によるヒルクライムや夏山スキーなども盛んで、様々な人が訪れる観光と登山の融合する山です。
また花の百名山にも制定されており、貴重な高山植物や可愛らしい山野草を見ることができる山としても人気があります。乗鞍岳山頂部には49科200余種の植物が確認されており、色とりどりの花が楽しめます。
5月の雪解けの季節には、ヒメイワカガミやキバナシャクナゲ、6月にはイワウメ、7月に入るとハクサンイチゲやクロユリ、コマクサ、ミヤマキンバイやミヤマキンポウゲなどが咲きはじめ、お盆を過ぎる頃には、イワギキョウやトウヤクリンドウ、モミジカラマツといった秋の花が顔を出します。
9月末には一足早い紅葉、初氷を観測し、10月10日頃には積雪の時期を迎えます。この開山期の半年の間に、四季をぎゅっと凝縮したかのような季節が移ろい、閉山してから半年間は、雪に閉ざされた長く厳しい冬を迎えます。
乗鞍岳には、国の特別天然記念物であるニホンライチョウが生息しています。国内の生息数が減少している中で、乗鞍岳のライチョウの生息数は安定しているといわれており、乗鞍はライチョウにとって住みやすい環境なのかもしれません。ライチョウも高山植物と同様に氷河期からの生き残りであり、日本のライチョウは世界のライチョウの生息域としては最南限に生息する種です。古くから日本では山は神の領域でライチョウも神の使いとして信仰されてきました。
乗鞍岳にはツキノワグマやニホンカモシカ、イワヒバリ、ホシガラス、カヤクグリ、テン、オコジョ、ウサギ、キツネ、リス等の野生鳥獣も多数生息しています。日本を横断する渡り蝶のアサギマダラ、タカやノスリ、ツミといった猛禽類の目撃もあり、多様な生態系を観察できる自然豊かな山です。